ヤモリ

初めてその姿を見たときは、ムカデ、ゲジゲジ、クモ、ナメクジ…、木立の中にある家ゆえに何でもありは受け入れざるを得ないことではあるけれど、ああ、お前もいたのかやっぱり、と覚悟した。
四肢を開き、ガラスにへばりつき、白い腹をヒクヒクさせている。拡大すればイグアナか恐竜にも似ている。
けれど、ここで暮らしてもう十余年である。いろいろな事柄やモノにもなれてきた。
ギャアギャア騒ぎながら殺虫剤攻撃やスリッパで叩きのめしていたムカデでさえ、いまでは慌てることなく静かにお湯をタラリンとかけて、弱ったところをトングで挟んで戸外へポイと捨てる。
長くておびただしい数の脚で歩き回るゲジゲジは、噛まないと聞いてからは両掌に囲いこんでこれもポイ。
ガラスにへばりつくヤモリを見続けるうちに、その姿はユーモラスで可愛いと思い始めた。昆虫やクモを食べるそうだし、家守とも書くらしい。
台所の流し台に向かえばヤモリがガラス面をチョロチョロと移動する。
この頃、ヤモリが二匹いることがある。実は日々、交替で出てきていたのかも知れない。二匹同時に見たのは初めてのことだった。
ひょっとして、恋人?嫁さん?
ずいぶん小さなヤモリも現れた。さては、家族がいたのか?
気になっている。

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