さすが、です。

まだまだ一面枯れ草の中からようやく草が頭を持ち上げ出した頃、春の陽射しに誘われて、草刈りなどしてみようかの気分。
鎌ならぬ枝切り鋏を持ち出して、バシャンバシャンとやっていた。
鎌を貸しましょうか?と心配されながら、笑われながら、草を刈っていた。
両腕が痛くなり、足腰の具合がおぼつかなくなる頃に作業をきりあげて家に入ると、ほぼ1時間ほどたっている。たまに半時間ほど超過していると、疲れがなかなか抜けなくて、その日はだらだらグータラ過ごすことになる。
気まぐれな作業はそれでも何回か続けることができたが、草の育つスピード、勢いはめざましく、とくに、あちらこちらに刈り残し、緑の離れ小島のような風情となっていたところは、いまや島の形も成さず、1mもの茅や蓬の生い茂る密林状態。暑さも暑し、密生した草を見ればいっそう暑苦しい。
「気まぐれに草刈りをしたので虎刈り状態になっているのですが…」
いつものFさんに、きれいにしていただくようお願いに行った。Fさんには、枯れ草が青々としてきた頃とお盆を迎える頃に毎年、草刈りをお願いしている。
「今年は、がんばって草刈りをしておられるなーと見ていました」と言われた。
翌日、さっそくに肩からベルトで草刈り機械を下げエンジン音を響かせて草刈りが始まった。
たちまちに草が舞い上がり飛び散る。わたしよりもずうっと年長だけれど、軽々とすいすいと草が刈り取られていく。
Fさんの仕事はていねいで、山椒やもみじ、椿などのまわりは鎌で草を刈り取り、高速で回る機械の刃が傷つけないように心配りをしてくださる。
以前にお願いした人は、たまたま見物していたときに紫陽花の枝を刈り飛ばしてしまった。隣家から枝を差し伸ばしていた紫陽花だった。
「また伸びます」。
確かに、花が終われば次々に枝を切り取る。けどなー。スマン、つい。とでも言ってくれぬものか…。
隣家にお詫びに行った。「また伸びます」と笑って許してくださった。
Fさんの草刈り作業は3時間ほどで終了した。
何日も何時間も草刈りをしたけれど、初めの頃に刈り取ったところからまた草が伸び始め、あたり一面がきれいに刈り取られているという状況にはついぞならなかった。
それが、さすがです。
ひょろひょろ立ち上がっている茅も蓬も見当たらず、もみじの枝葉がのびやかに広がり、緑がひときわ鮮やかに見える。
生い茂る草は暑苦しいが、短く刈られた草地に大きな枝を広げたもみじは涼しい木陰を作る。
刈って散らばったままになっていた草がFさんの軽トラックに積み込まれ運ばれていった。Fさんの畑のトマトや茄子の根元に敷かれて日照りを防ぎ、やがては肥料にもなるのだそうだ。
Fさんの野菜をたびたびいただく。
掃いたようにきれいになったわが家の草地。刈られた草は肥料となり、育った野菜をいただいて、なんと幸せ、幸せ。

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