霧の朝

一面、薄く優しいミルク色に霞んでいる。
いつもJR駅へと走る峠のあたりは濃霧の中に木立の頭が黒く見える。あの峠を下れば、今朝も深い霧がたちこめているだろう。
このあたりが朝の太陽に照らされているころに車を走らせたのに、峠にさしかかるころは薄いベールをかき分けるような進み方となり、峠を下るときには真っ白、いやいや乳白色というのか、濃霧の中に閉じ込められる。たった数分走るだけの距離なのに、向こうとこちら、朝の情景は大きく異なる。
だんだんと霧が晴れれば、里を取り囲む円くて低い、おだやかに優しい山々に紅葉景色がパッチワークのように広がっている。家々の脇には熟柿が残り。山茶花、柚子が色を競っている。
「 なあんにも無いけど紅葉の野山 」と下手な筆文字に現した。
なんとか寺とかなんとかの庭などと賞賛される紅葉の場所は無い。でも、小さな里を囲む、山というより丘のような低い山々と、田んぼと、土手が、紅葉、黄葉に染まっている景色はまことに美しい。
あんなに暑かったのに。あんなにひどい風が吹いたのに、ようやく涼しくなったと思ったら、また夏の暑さにもなったのに…。
今年も美しい紅葉景色を見せてくれたことに、感謝、感謝。

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