とんど

「 権現さんの前でとんどをします 」と誘っていただいた。田畑にうっすらと雪の降った日。
寒気厳しい中、紙袋に今年の注連飾りと昨年の分も入れて行った。
とんどへのお誘いは初めてのことだった。
お正月飾りの始末に困っていた。まさか、用が済んだからとゴミのような扱いはできない。燃やすといっても、林の中での焚き火は恐い。で、昨年のお飾りも置いたままになっていた。
生家がここから4㎞ほどの集落にある。そこでは昔から近隣が集まって、大きなとんどをしていた。そちらへ持って行った年もある。
いろいろな正月飾りや書き初めや古い年賀状などを焚き上げる。
周りの竹林から手頃な竹を切って、先端に切り込みを入れ、餅を挟んで焼いた。
餅は上手には焼けなくて、ほぼ黒焦げになったが、とんどの火で焼いた餅を食べれば、神様のおかげがある、と焦げて煙りの匂いもしみついた餅を家族みんなで分けて、ひと口ずつ食べた。
1999年から暮らしているこの近隣では昔から、各戸それぞれに正月飾りを庭や畑で焚く習慣だったようだ。
誘っていただいた権現さんの前で持ち寄った正月飾りを焚き上げた。小学生も赤ん坊も参加していた。
ここで暮らし始めたとき、近隣10軒のうちであんたが一番若い、と言われた。53歳のときであった。どの家にもこどもたちはいなかった。
現在では新しい家も建ち、赤ん坊から保育園児も小学生も、その親、そして90代も…、さまざまな年代の人が暮らす地域となった。
こどもたちがいる暮らしが、みんなでとんどをしませんか―のお誘いのきっかけになったのかもしれない。

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