パンダ

パンダを洗っている。
パンダの形をしたクッションである。クッションであるから、ころころ丸い可愛さはなくて、体型はやや膨らんでいるぐらいである。
作った人の好みであろうか、顔がぶさいくである。
友人がやっているバレエ教室の待合室にあった。
たぶん、新しくて珍しかった頃は可愛がられていたのだろう。抱き締められたり、あっちの手からこっちの胸へと渡され、投げられたり落とされたりしていたのだろう。
縫い目がほころび、白い部分は汚れて黒ずんでいた。
汚くなったパンダは見向かれなくなったか、肩を落としたショボタレた姿で、ソファの端っこにペタッともたれていた。
これ、持って帰っていい?と尋ねると、あなたが縫いぐるみに興味を持つなんて…と友人は笑いながら手渡してくれた。
持って帰って、破れたところを繕って、手洗いをして干しておいたらきれいになった。
それからわが家のソファに置いてあった。
作文教室へ来るこどもたちが代わる代わる抱いたり、話しかけたりしていたが、やっぱりそのうち、誰も抱き上げることもなくなった。
寒い季節はわたしの背あてになり、足の枕になった。
春が近づいて部屋の間仕切り戸を開け、太陽の光が射し込んで来ると、パンダの汚れがずいぶん目立つ。
本日、パンダの洗濯日である。

「パンダ」への1件のフィードバック

  1. 久々の訪問です。腰痛もう大丈夫ですか?パンダのお洗濯日を忘れない心がけですし・・・大丈夫かな?
    お大事に! 
    “如月”、篠山の春の到来のお便り、私も窓を開けたくなってしまいました。
    民家集落博物館の梅林も、今桃源郷のよう、蕗の薹もそろそろ終わりですが、先週のボランティアの日に少しだけ
    get!秘密の天ぷら、苦くておいしかったです。

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