栗 その2

隣家から毎年、栗をわけていただく。
わが家にも栗の木はあるが、手入れも何もしていなくてただ高く高くそびえている。ある日、まるで空からいが栗がポトリ、ドサリと降ってくる。それはそれでうれしい季節の便り。
両足で挟んでいがの中から実を取りだし、拾い集めた栗を入れてご飯を炊いたり、ゆでたりする。
お隣さんの栗は、それはそれは手入れのいきとどいたみごとな大粒。この栗で渋皮煮を作れば、琥珀色の仕上がりにうっとりと見惚れる。
それほどの出来栄えを得たいがために毎年、栗と格闘している。
渋皮を傷つけぬように鬼皮をむかねばならぬ。渋皮に傷がつけば渋皮煮が作れない。
渋味を抜くために何度もゆでては水を取り換え、の作業を繰り返さなければならぬ。
火力は弱くして、決して煮たたせてはならぬ。火力が強いと渋皮が破れる。
渋皮が破れた栗が混じっていると渋皮煮の液が濁る。
渋味を抜くために何度もゆでては水を取り換えを繰り返すけれど、渋味を取り過ぎてもいけない。渋皮煮だから。
作業はゆっくりゆっくり気長にすすめる。
この間、ガスコンロの前に貼り付いていなければならない。外出は不可、である。
がまん、しんぼうという格闘をしている。
渋味を抜く作業をようやく終えると、砂糖と少しの醤油で味を付け、静かに煮ていく。2時間ほど煮たら火を止めてそのまま放置し、だんだんと冷えて味がなじむのを待つ。
完成した渋皮煮が口に入るのは翌日になる。
とてもめんどうくさいけれど、秋が来たな~と思う時である。
いろいろな作り方があり、作り手それぞれの味があろうと思う。
わが家の渋皮煮は、甘さ控えめ、ちょっとあっさりめの味ではあるが、作るたびに違う味。なかなか、これぞ!という仕上がりにはならない。
この秋4回目の渋皮煮の味がなじむのを待っている。

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