夏の朝 2

雨戸を繰ると、網戸に蝉が数匹くっついている。
この頃はアブラ蝉が多くなった。アブラ蝉ばかり10匹もくっついている。地面にはポツポツ、ポツと幼虫が抜け出た穴が開いている。
ニイニイ蝉からアブラ蝉へと夏の経過を思い、敷居のレールで轢きつぶさなくてよかったと思いながらもうひとつの雨戸を繰れば、雨戸の隙間に蛇が居た。多分、長ーく伸びていたのだろう。ガラガラと雨戸を繰られて仰天したのだろうな…。とぐろを巻いてボール状になった。
自分のものと思えぬ悲鳴が出た。
雷のときも騒いでしまうが、そちらの方がまだ余裕がある声かもしれない。
蛇が怖いわけでもない。見なれている。
けれど、出くわす場所、タイミングによりけりである。
昔、茅葺き屋根の生家では仏壇の隙間に入っていく蛇を見た。蛇は家の守り神だなどと言われては騒ぎ怯える訳にもいかない。
男の子たちは棒っ切れの先に蛇を絡みつかせて、仲間を追いまわしていたなー。
あのとき、逃げながらあげた悲鳴には遊びふざけた声も混じっていた。
蛇が噛みつくわけでない。が、やっぱり幾十年の年を重ねても、やっぱり好もしいものではない。
ムカデに蛇、灯のもとに近づこうとしてか網戸にへばりついて夜を明かす蝉たち。ムカデに似てムカデより脚の長いゲジゲジも雨戸の隙間から這い出してくる。
夏の朝、雨戸を繰るにも油断ならない。

「夏の朝 2」への1件のフィードバック

  1. 3日まえから、鬼が喚くように鳴いていたクマゼミがおとなしくなりました。アスファルトのフライパンで煎られ絶命しているものもいます。この子は恋をしたろうか…などと感傷に浸りつつ一首。
    ・恋人はもはやうせたり遅夏の蝉の声する寂々(じやくじやく)しーぃと

    8月4日付日経新聞歌壇・穂村弘選で掲載されました。
    ・飼うこともなき犬の名を決めてゐる金色の毛の靡くを想ひ

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