オトモツイタチ

12月1日の朝食は、小豆ごはんと茄子の漬物だった。昭和30年代、父母と妹の4人暮らしだった頃のこと。
オトモツイタチだ、と父親が言い、母親が調える小豆ごはんと茄子の漬物をカマドの焚き口の前に据えた小さな椅子に座って、押し込むように、ねじ込むように食べてから登校した。酸っぱい茄子の古漬けは小学生にはどうにも苦手な代物だった。
新年の前の月の1日は、新年にお供をする月だから、お供一日だったのか?とも思うが、1月から12月までの月をこどもに例えるなら、12月は末子だから乙子で、その1日、乙子一日、オトゴツイタチという風習が全国的にあるようだ。餅を食べる地方もあるらしい。
こどもの耳にはオトモツイタチと聞こえたし、父親も言い直しもしなかった。
オトモツイタチの朝は、まだ鳥の鳴かぬまに食べるものだと父親はうるさいが、登校前のあわただしい朝食どき、酸っぱい茄子をガマン、ガマンで食べた。

正月は正月で、銘々のお膳に、なんだかんだの縁起にちなんだ食べ物が並ぶのであった。

「オトモツイタチ」への1件のフィードバック

  1. こんな風習があったとは(@_@;)それも全国にあるなんて!でさらにビックリ。
    もっと知りたくなりネットを覗いたら「乙子(おとご)」がなまって「おとこ」、「おとも」に
    なった?等のコメントあり。しかしこの風習があることをこの年まで知らなかった。
    日本の風習に詳しい方がいる家庭で行われていたんだなぁと思った。
    茄子の漬け物は借金をなす→返済が早まる。などと知って楽しい。

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